今年の4月にリリースされた『インターネットやめたい』を初めて聴いたときは、またオモシロソングを見つけたくらいの軽い気持ちだったんですが、
その翌月に出た『恋』を聴いたら「なんてみずみずしい歌詞を書くんだ!」と、落差に風邪を引きそうなくらい驚いて、ほかの楽曲も聴くようになりました。
中年だから「終活」の文字に惹かれたわけではありません。
バンド「終活クラブ」とは
名前だけ聞くと高齢者が集うサークル活動と勘違いされそうですが、2024年にメジャーデビューした新潟で活動する4人組のバンドです。
- ボーカル・ギター:少年あああああ
- ギター:石栗
- キーボード:羽茂さん
- ドラムス:ファイヤー・バード
ボーカルの方のお名前が「少年あああああ」というのも、ネットカルチャーにどっぷり浸ってきたことがうかがえます。ライブ以外では顔出しはしておらず、MVもメンバーの顔は隠れて一切わかりません。確かなことは性別が〈男性〉だということくらい。
アルバム『メジャーな音楽』からピックアップ
そんな情報の少ないバンドのどこに惹かれたのか、今年10月にリリースしたメジャーデビュー後初のフルアルバム『メジャーな音楽』から、特によく聴いた曲を上げていき、その魅力について語ってみたいと思います。
「インターネットやめたい」
先述したファーストコンタクトの1曲ですが、ネットあるあるなオモシロソングかと思いきや、最後まで聴くとネット社会でバンド活動していく、ひいては創作活動していく如何ともしがたい難しさ、知らなくてもいいことを知ってしまうやりづらさには頷くしかなく、揶揄するだけでは終わらない身に染みている言葉には聴き応えがあります。思えばこの曲から惹かれるものがありました。「ギターソロなんかいらない」からこれ見よがしにギターソロがはじまるのはロックンロールの証拠だと思います。
ちなみに歌詞の「架空請求を父親が払った」は実話だそうです。
「足りない」
誰かを想う歌であっても、恋とも友情ともつかず、性別も明確に言い切ることが少ないのが終活クラブの特徴の一つで、その分耳を傾けやすく、聴けば多くの人に届くのではないかと思っています。
この曲も単純に失恋のようで、そうとも言い切れない曖昧さと、もしかしたら想う相手はすでにこの世すらいないのでは?と思える曲調の浮遊感から、気持ちの行き場の無さに胸がギュッとします。
「幽霊」
この世からいなくなった大切な誰かに向けて、愛おしむように一言一言かみしめる歌詞が染みるお盆ソング。
じぶんは亡くなった古い友人を思い出して、不覚にも目に涙をためてしまいました。死者をテーマにしながら、疾走感のある曲調が暗くならず、聴き終えたあと心地のよい一曲です。
「エキチカダンスフロア」
ごりごりのダンスミュージックが始まったかと思ったら、初手の「クラブにも行ったことない」に思わず吹き出しました。ロックンロール一筋かと思いきや、ジャンルの幅は意外と広いのだと分かり、バンドのこれからを期待させてくれます。軽快に入ってくるギターもよく、気に入っている一曲です。
『メジャーな音楽』プレイリスト
他にも「劇伴」や「ビトビト」、アルバムの最後をしめる「無名芸術」など、おすすめしたい曲はあるのですが、長くなるのでアルバムのプレイリストを貼って、この辺りにしておきます。気になったらぜひ聴いてみてください。
斜に構えたような卑屈さがありつつも、力が抜けたゆるいボーカルのおかげで冗談のようにも聞こえ、それでいて繊細な言葉の選び方に誠実さが伝わってくるのが、今年聴き続けた理由だと思います。
ブレイク前夜ではないかと
楽曲の魅力は十分あると思うので、あとは世間に見つかるのを待つだけという気がしていて、深夜アニメのOPとかを担当して、火が付きそうな予感がしております。
ただブレイクしたとき、バンドの匿名性をどこまで維持するのか、斜めに構えたスタイルが矯正されたりしないか、ちょっと親目線で勝手な心配をしつつ、来年も見守っていきたいバンドです。





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