2022年のタイムラインで、「濱マイク」の文字をまさか演じたご本人のツイートから目にするとは思いませんでした。先行してHuluから配信され、先日21日にAmazonプライム・ビデオでも配信がはじまりました。誰に感謝すればよいのか分かりませんが、とにかくありがとうございます！
そもそも『濱マイク』とは
林海象監督による三部作映画が始まりで、1994年に第一作『我が人生最悪の時』が公開されています。横浜の下町にある映画館の二階に事務所を構えた、正義感が強くておっちょこちょいで女に弱い探偵の物語。まさに王道。この名前は『マイク・ハマー』というハードボイルド小説が由来だとか。
シリーズの特徴としてまず一つ上げるなら、濱マイクを取り巻くキャラクターが、というか演じる俳優さんがとにかく濃ゆいこと。映画版の主要なキャストとして、マイクに探偵家業を教え込んだ師匠が宍戸錠。敵対する刑事に麿赤兒。友人で情報屋の白タク運転手がナンチャンこと南原清隆。そのほか三作に渡って佐野史郎、塚本晋也、山口智子、杉本哲太、杉本彩、小日向文世と目白押すキャスティング路線は、響くひとには響くのではないでしょうか？おれはかなり響いた。
ドラマは映画の続編という位置付けではないので、濱マイク以外の配役は一新されましたが「そもそも俳優じゃないよね？？」という人も登場し、濃ゆさの系譜はしっかりと受け継がれております。主演である永瀬正敏さんのInstagramにて、各話の出演者などが丁寧に告知されているので、未見の方は一度目を通されることをおすすめします。
ドラマ版『濱マイク』の特徴
映画がドラマ化されるのはちょっと珍しいかもしれませんが、さらに珍しいのは全12話がそれぞれ違う監督と脚本家によって作られたところです。豪華なゲストが出演し1話で完結。メインキャスト以外は出演者もストーリーもガラッと変わり、怪しい依頼と個性的なキャラクター達に翻弄される探偵ドラマとしての面白さとうまく噛み合っていると思います。前後の繋がりは多少あるものの、各話は独立しているので何話からみてもOK。気になる監督や役者さんが出る回を先に観ちゃうのもアリだと思います。
個人的には、今年3月に亡くなった青山真治監督が脚本も担当した第6話が、舞台が横浜ではなく八ヶ岳というシリーズでも吐出した不思議なストーリーで印象に残っています。また映画もよく観ていた石井聰亙（現・石井岳龍）監督の8話は”らしさ”が炸裂していて狂喜しましたし、浅野忠信出演の10話の脚本が漫画家のやまだないとというのも見逃せません。脚本ではなく漫画として描くなら、逆にどんな感じになるだろうかと想像したりしました。そして11話の監督が『シド・アンド・ナンシー』のアレックス・コックスと知ったときは「どうやって連れてきたんだ！？」と驚きしかありませんでした。
16mmフィルムで撮影されたこともあって画面の質感がほぼ映画といってよく、「こんな贅沢なもんを毎週タダでみれてもうてええんか！？」と放送当時テレビの前で打ち震えたもんです。
すでに発売されているDVD版は、ディレクターズカットとして映画のように再編集された経緯からか、EGO-WRAPPIN’が歌う主題歌「くちばしにチェリー」がカットされていましたが、配信版ではめでたく復活。このオープニングは映像と合わせてかなりかっこよくて好きだったので嬉しい限りです。
続編への期待も高まる
ちなみに、当時TV放送が月曜22時からだということもあってか、視聴率的にイマイチだったのはいまだ納得いってません。セットの凝りようを見ても相当な予算がかかってるはずなので「ちゃんと制作費回収できてるのかなあ」といらぬ心配をしていました。20年も経てばさすがに予算の心配はしなくてよいと思いますが、今回の配信をきっかけに新シリーズが企画されたりしないか、配信サービスのオリジナルドラマも盛況な昨今ならあるいは？と期待してしまいます。
濱マイクの事務所があった映画館、横浜日劇はこのドラマを語る上で重要な影の主役くらいに思っていましたが、2007年に解体され今はもうありません。変わりゆく横浜の風景を活写した稀有な作品でもあると思います。
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