1300年代後半に作られたという物語が作者も分からないまま語り継がれ、2021年に映画となって公開される事にそこはかとないロマンを感じます。
映画『グリーン・ナイト』の原作について
原作となっているのは『ガウェイン卿と緑の騎士』というイングランドで14世紀後半に書かれたアーサー王物語のひとつ。作者は特定されておらず題名から「ガウェイン詩人」と呼ばれたりするそうで、韻文でつづられていたというのもさらに謎めいて惹きつけられます。今で言うとラップでラノベを書くというところでしょうか。主人公は円卓の騎士の一人、アーサー王の甥であるガウェイン。
原作に関する解説は 国際アーサー王学会日本支部 のサイトにある「中英語アーサー王ロマンス『ガウェイン卿と緑の騎士』(アーサー王伝説解説)」のページに興味深くまとめられているので一読される事をおすすめします。
本作品の評価は中世英文学史上、目を見張るものがあります。本学会元会長の慶應義塾大学名誉教授・髙宮利行先生の言、「中世英文学の傑作をひとつだけ挙げよと言われれば、わたしは躊躇なく14世紀後半に書かれた騎士ロマンス『サー・ガウェインと緑の騎士』を挙げたい」は、その顕著なものでしょう。
中英語アーサー王ロマンス『ガウェイン卿と緑の騎士』(アーサー王伝説解説)
今回は、14世紀末にイングランドに誕生した英文学史に燦然と輝く傑作『ガウェイン卿と緑の騎士』について紹介したいと思います。
ただ、「あらすじ」の項はそのまま盛大なネタバレとなる可能性があるので原作を読んだことがなく日本公開(現在のところ未定 2022/11/25(金)に公開が決定)までストーリーは知らない方がよいという人は、序文の「はじめに」だけに留めた方がよいかもしれません。700年以上も前の物語を指してネタバレと言うのも変な話かもしれませんが。逆に全く内容を知らないから要約だけでもつかんでおきたい人には最適なテキストかと思います。
ゲーム好きとしては「緑の騎士はモンスター?」の項で『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』が引用(しかもスーファミカセット『ドラクエV』の写真入り)されているのがとても興味深いポイントでした。
海外での評価は?
全米では2021年7月30日に公開され、Metacriticのスコアは各メディアとも高くユーザースコアもまずまずといったところ。予告編に登場するしゃべるキツネやドデカい巨人をみると結構アレンジが加えられていそうなので、アーサー王にまつわる伝説は人気があるだけに原作と比べたとき人によって評価は分かれそうな気もします。
ちなみに、The Green Knight公式Instagramに公開されている登場人物の5枚あるポスターの最後にキツネもバッチリ紹介されているので、重要な役どころなのは間違いなさそう。ふさふさしたキュートな背中を見ると期待せずにはいられません。というかこのポスターほしいな。
関連リンク
- 映画『グリーン・ナイト』公式サイト(2022/8/15 追記)
- 映画『グリーン・ナイト』𝟏𝟏.𝟐𝟓(𝐅𝐫𝐢) 𝐑𝐎𝐀𝐃𝐒𝐇𝐎𝐖♞(@GREENKNIGHT_jp)さん / Twitter(2022/8/15 追記)
- The Green Knightさん (@TheGreenKnight) / Twitter(英語)
- 中英語アーサー王ロマンス『ガウェイン卿と緑の騎士』(アーサー王伝説解説)
- アニメーションやゲームに登場するアーサー王物語と円卓の騎士について(2022/11/19 追記)
ゲームの例として『ゼルダの伝説』『ファイナルファンタジー』、はては乙女ゲーの『Princess Arthur』までかなり幅広く挙げられ、実際にプレイしていないとわからないゲーム中の登場場面まで示されているので「この先生、ただ者じゃない!」感がスゴい。『グリーン・ナイト』からはそれるけど、こちらも一読の価値あり。
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